○水虫の薬をぬらずに受診してください。
★水虫の薬をぬらずに受診してください。
足に水虫らしい症状がある場合、市販あるいは家族などの水虫の薬をぬらずに受診して下さい。
水虫の薬をぬると、診断ができなくなります!
本当に水虫の場合でも、あるいは、
本当は水虫ではない場合でも、
お薬により、水虫菌(白癬菌)がおさえられてしまうために、
顕微鏡で検査をしても、水虫菌(白癬菌)を見つけることができません。
もし、すでに水虫薬を塗り始めておられる場合は、水虫として2~3ヵ月は継続して塗るようにしましょう。中途半端に治療を中断すると、水虫は再発しやすいです。
★水虫と似た皮膚疾患
水虫らしく見えて水虫ではない症状の代表として、
汗に伴う皮膚症状、汗疱状湿疹・汗疹性湿疹があります。
水虫と同じように、
足の指の間がかゆくなり、ふやけたり、赤くなったりします。
水ぶくれの症状も出ます。
もし、この症状に水虫の薬をぬった状態で受診された場合・・・
見た目や症状は水虫と同じなので、見た目で診断はできません。
しかも、検査をしても、薬により水虫がおさえられてしまっているので、水虫菌(白癬菌)が見つけられません。
つまり、診断できないのです。
現在の症状に対して、
水虫の薬を続けるべきか、
汗による症状をおさえる薬をぬるべきか、
判断ができなくなってしまうのです。
★本当に水虫でも・・・
水虫の薬をぬらずに受診していただいた場合でも、
何らかの影響で、検査をしても水虫菌(白癬菌)が検出できない場合もあります。
その場合は、汗による皮膚症状(汗疱状湿疹・汗疹性湿疹)の可能性をまず疑い、
その症状をおさえる薬を処方しますが、
普段から安全靴を履いておられる場合など、水虫に罹患している可能性も完全に否定できない場合は、
1~2週間後に来院していただき、本当に水虫がいないか、再検査させていただくこともあります。
★間違って水虫と言われる場合も・・・
実は、水虫が「いる」と診断するよりも、「いない」と診断する方が難しいのです。
きちんとした皮膚科医であれば、顕微鏡で水虫菌(白癬菌)を間違うことはないのですが、
顕微鏡では、水虫菌(白癬菌)に似た構造、
いわゆる”モザイク菌”が水虫菌のように見える場合があります。
”モザイク菌”は顕微鏡でたくさん見えます。
これを水虫菌と間違うといけません。皮膚科医失格です。
場合によっては、“モザイク菌”を水虫と判断し、
水虫という診断で水虫薬が処方されてしまう可能性も否定できません。
水虫が「いない」と診断するには、
顕微鏡でくまなく確認して、たくさん紛れている”モザイク菌”を水虫菌と間違わずに、
すべての視野で水虫菌が「いない」ことを確認しないといけません。
当院では、かなり厳密に水虫菌の判断をしていますので、水虫菌ではない場合には、水虫の薬は処方しません。
★水虫と診断して欲しい患者さん
ご自身の症状を「水虫に間違いない」と考えて受診される患者さんも多くおられます。
検査をして水虫菌がいない場合は、当然ですが、水虫の薬を処方しません。
しかし、「絶対水虫だから、水虫の薬が欲しい」とおっしゃる方もおられます。
私としては、水虫ではない方が良いと思うのですが、水虫である方が良い、と思われる方もいるようです。
顕微鏡検査して、患者さんの希望通りに水虫の薬を処方する方が、医師にとっては簡単です。
患者さんの希望に添いますし、患者さんともめることもありません。
欲しい薬を処方してくれるお医者さんとしてありがたい存在かもしれません。
しかし、私はたとえ、患者さんから不信に思われても、患者さんの希望に反しても、
水虫がいない場合は、「いない」とお伝えします。頑固ですみません。
★爪水虫?
爪の変色・変形・肥厚も、
「すべては水虫のせい」と思われて受診される患者さんも多くおられます。
爪水虫かどうかも、顕微鏡で検査することが必須です。
足の爪は、普段から歩くことで様々な負荷を受けていますので、徐々に変形や肥厚をきたすことがあります。
特に親指と小指の爪は、その影響を受けやすいです。
また、年齢とともに爪も乾燥しますので、ボロボロしたり、カサカサしてきます。
残念ながら、その場合は、以前のような爪に戻すことは難しいです。
★たとえ水虫でも、水虫薬で悪化することもあります
ここまで、水虫でない場合に、水虫の薬をぬってはいけません、ということを記載してきましたが、
”本当に”水虫の場合でも、水虫の薬で悪化する場合があります。
ここが皮膚科医の腕の見せ所です。
その理由など細かいことは省略しますが、とにかく自己判断で水虫の薬をぬらないでくださいね。
以上、色々と書きましたが、
すべてのことを患者さんが覚える必要はありません。
たった一つ覚えていただきたいことは、
冒頭の「
水虫の薬をぬらずに受診してください。
」という一点だけです。
水虫の治療だけでも、
皮膚科医は実は色々と考えて治療をしています、ということをご理解いただければ幸いです。
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